フロー計算書とは
行政キャッシュフロー計算書は地方公会計の論点にどう答えるか
行政キャッシュフロー計算書に内在する会計目的
貸借対照表がないのはおかしいか?
そもそも地方自治体の貸借対照表に何が期待されていたのだろうか。ひとつには資産・債務改革があった。「簡素で効率的な政府」を実現し債務の増大にブレーキをかける観点から、「行政改革の重要方針(平成17 年12 月24 日閣議決定)」及び「行革推進法案」において、地方も資産・債務改革に積極的に取り組むものとされていた。資産・債務の適正な管理や資産の有効活用等に資するべく貸借対照表の作成が奨励されていた。こうした文脈をたどれば、総務省改訂モデルの貸借対照表が敢えて「売却可能資産」を区分表示した意図も理解できる。それにしても、資産売却による財政のスリム化を意図するものなら売却可能資産をリストアップした財産目録で必要かつ十分なのではないかと思う。貸借対照表の様式だと、それを使って財務分析をするつもりで読んだとき誤解を招きやすい。
現金主義よりも発生主義が優れているか?
単式簿記よりも複式簿記が優れているか?
連結ベースの分析が重要か?
また、企業の損益計算書に見慣れた目でみると行政コスト計算書はわかりにくい。経常収益が非常に小さく大赤字の会社のように見える。経常収益に税収を含めていないからだ。これは住民を顧客とみるか拠出者とみるかの違いに由来している。地方公会計は拠出者と捉えている。「確定拠出年金」という言葉や保険を想像すると分かりやすいが、拠出とは相互扶助等を目的にお金を出し合うイメージである。地方公会計の文脈には受益者負担でカバーできなかった部分をみんなで補てんするスキームがあるようだ。財務4表のひとつ純資産変動計算書は、常に「赤字」である行政コストを住民からの税金で補てんするような算式体系になっている。これを行政経営の発想でみようとするから違和感が生まれる。住民を拠出者ととらえる地方公会計は、住民を顧客と捉える行政経営としっくりこない。新しい行政経営(New Public Management)は効率よく行政サービスを提供し顧客満足度を高めることがコンセプトである。地方自治体と住民の関係を、行政サービスの提供者と受け手の関係と捉えている。これを財務諸表に反映させるとすると、行政サービスのコストと対価が対応関係、少なくとも期間対応になると考えるのが自然だ。
財政投融資改革の総点検フォローアップ(平成17年12月12日)
なお、平成18 年度からの地方債協議制度への移行等を踏まえると、地方公共団体の財政健全性の維持・向上を促すような環境づくりが重要であり、地方向け財投については、融資主体が貸付先の財務状況、事業の採算性等を適切にチェックしていく枠組みが重要である
財政制度等審議会 財政投融資分科会 議事録(平成18年7月26日)
〔上野計画官〕それから、もう1点の役割分担の話でございますけども、もとより私どもと総務省とは、自治体に対して見る立場、観点が違うわけでありまして、この分科会でもご指摘をいただいたのは、融資主体としての私どもの融資審査の充実という立場からの財務状況の把握という点でございます。総務省は法律上の地方自治体に対する別の立場からの権限をお持ちでございますので、私どもも今回ヒアリングをやるに当たりまして、自治体の負担がいたずらに増えないようにということで、私どもの独自の観点から、財務状況の把握を効率的にやっていくという点に十分に留意いたしたところでございます。
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