外国為替入門講座 為替相場を決めるもの 第10回 為替相場の決定理論
外国為替入門講座 第10回 為替相場の決定理論
1.為替相場決定理論
≪フローアプローチとストックアプローチ≫
◆フローアプローチ
フローアプローチは、 一定期間の取引高から需給を捉える 方法です。一定期間に生じた対外取引の受取りと支払いの金額から、為替レートを導き出します。
フローアプローチによる理論は、 固定相場制 の為替市場を背景に唱えられた理論に多く、一般に 古典派理論 と呼んでいます。
※固定相場制とは、決済に利用される為替レートが一定相場に決められている取引制度のことです。
◆ストックアプローチ
ストックアプローチは、 一時点の資産残高から需給を捉える 方法です。投資資産に占める外貨資産の保有額の比率から、為替レートが決まると考える理論です。
ストックアプローチによる理論は、1970年代以降の 変動相場制 の為替市場を背景に唱えられた理論で、 近代派理論 と呼んでいます。近代派理論が古典派理論より優れた理論というわけではありません。古典派理論の方が実際の為替レートの動きをうまく説明できる場面も数多くあるからです。
2.古典派理論
≪国際収支説(国際貸借説)≫
為替の需給は 国際貸借 の状況により決まってくると考える理論を、 国際収支説 とか 国際貸借説 と呼びます。英国の銀行家で政治家でもあった G・J・ゴッシェン (1831-1907)が、1861年に唱えた理論です。これは、国際貸借の状況を一定期間の 経常収支 から捉えようと考えたものです。
国際収支説の問題点は、国際収支から為替の需給関係の実態を把握できない点です。為替の決済を遅らせたり早めたりする リーズ・アンド・ラッグズ の動きを、経常収支は捉えていません。また、国際収支のデータ収集方法は、各国の統計データに誤差があり、信頼できないという弱点があります。
国際収支説は、19世紀後半から第1次世界大戦に至る金本位制時代に支持された理論です。当時の国際収支は、大半が経常収支であったため、経常収支で為替の需給関係を把握できたのです。ところが、1980年代以降から、国際収支の中で 資本収支の占める割合 が大きくなり、経常収支のみでは国際間のお金の動きを見るのはむずかしくなってきました。そのため、経常収支と、1年以上の資本(資金)の動きを見る長期資本収支をくわえた基礎的収支の動向を見るようにしています。
国際収支説は、 短期的な為替レートの動き を説明する場合に適しているようです。
◆参考
≪購買力平価説≫
外国為替レートは、 自国通貨と外国通貨の購買力の比率 によって決定されるという理論を、 購買力平価説 と呼んでいます。スウェーデンの経済学者、 G・カッセル (1866-1945)が1921年に唱えた説です。
物やサービスの価格は、通貨の購買力を表しています。財やサービスの取引を自由に行える市場では、同じ商品の価格は1つに決まります。これを 一物一価の法則 といいます。取引が自由に行えて価格の情報が十分に与えられるのであれば、海外でも同じ商品の価格は同じ価格で取引されるはずです。
もし、米国の物価が日本より安ければ、米国の製品を買う人が増えるはずです。円を売ってドルを買う人(円安ドル高)が増えるため、米ドルは上昇します。逆に、日本の物価が米国より安ければ、日本の製品を買う人が増えるはずです。米ドルを売って円を買う人(円高ドル安)が増えるため、米ドルは下落します。
日本で1個100円のハンバーガーが米国で1ドルであったとすれば、為替レートは、1ドル=100円で釣り合うと考えられます。これを 絶対的購買力平価説 といいます。
しかし、ある一時点の通貨の絶対的な価値(購買力)を把握するのはむずかしい問題です。そこで、2国間の物価の相対的な動きに着目することにしました。2国間の物価のどちらがより大きく変動したかを見ることにしたのです。
2国間の物価指数上昇率の差を インフレ格差 といいますが、2国間のインフレ格差から為替レートを決める方法を 相対的購買力平価説 といいます。
購買力平価説は、 長期的な為替レートの動き を説明するのに適しています。
≪為替心理説≫
為替心理説とは、「為替レートは、市場参加者が抱く投機的心理(思惑、期待、不安など)によって変動する」と考える学説のことです。フランスの経済学者、 アルベール・アフタリオン (1874-1956)が1926年に発表しました。
3.近代派理論
為替相場制度は、 1973年に変動相場制 へ移行しました。これに呼応して主要諸国は、資本(資金)の国際間の移動を自由化させる措置を取ったため、お金が 投機目的 で世界を飛び回るようになりました。
近代派理論は、こうした投機目的で動き回るお金が増えたことに着眼して導き出された理論で、ストックアプロ-チを中心に展開されています。
≪アセットアプローチ≫
アセットアプローチは、 ある一時点の金融資産(アセット)の保有高 に注目して、為替の需給関係を見ようとする理論です。金融資産の組合せのことをポートフォリオと呼ぶところから ポートフォリオ・アプローチ とも呼んでいます。
為替レートは、投資家による 国際間での資産選択を通して決定される資産価格 の一種で、異なる通貨建ての資産の 期待収益が等しく なるように決定されると考える理論です。
期待収益率というのは、収益の実現がはっきりしない場合に予想される、平均的な収益率のことをいいます。簡単にいえば、 為替相場を決めるもの 将来の予想平均収益率 のことです。
投資家は、将来に予想される利回りのほかに、キャピタルゲインやキャピタルロスというリスクを考慮して、国内外の資産にどれだけ投資するかを決めていきます。このポートフォリオに組み込まれる外貨建て金融資産と邦貨建て金融資産の 保有比率 によって、為替レートが決定されると考える理論です。
為替相場よむ3つのポイント 円・ドルどう売買
たとえばこれまで人気のなかったニンジンに、甘い品種が開発されたとしましょう。ニンジンが苦手だった子供たちが一斉に新商品に飛びつくと、値段はどうなるでしょうか? 新商品の値段は恐らく上がるでしょう。人気が高まれば値段が上がる、と考えればわかりやすいですね。では新商品以外のニンジンの値段はどうでしょうか? ニンジン全体でみると、甘い新商品を欲しい人が増える(需要が増す)分、そのほかのニンジンの需要は減ると考えられ、したがって値段は下がります。
1日5兆ドルが動く
(2)金利――中央銀行に注目する
(3)物価――インフレは円安要因に
<いかに予想するか>
予想の視点(1)ニュースの先を読む
予想の視点(2)データで先を読む
予想の仕方に「正解」はない
▼第19回円・ドルダービー 全国学生対抗戦への応募は こちらをクリックしてください 。1回戦締め切りは5月末。中学校から大学までの学生が対象で、同じ学校に所属する3人以上でチームを組み、指導教員がつくのが条件。1人の教員が複数チームを担当してもかまいません。3人に満たない場合や教員がいない場合は失格。参加時の応募番号をなくしても失格になることがあります。予想方法や予想の根拠は、別途、電子メールで添付ファイルとして送ってください。 電子メール[email protected] くわしい募集要項は関連記事「第19回 円・ドルダービー 全国学生対抗戦」をご覧ください。
外国為替相場の仕組みと予想のポイント
「ニーヨン、ウリ、ニ(24、売り、2)!」。スピーカーからある銀行のディーラー(外貨取引の担当者)の注文が流れます。この 暗号 のような言葉のうち、「24」は銭の部分を表します。この日の相場が110円台だったとすると、円の単位はみんな分かっているので省略し、「110円24銭」という価格を提示していることになります。「2」は売買高です。ドルの取引は100万ドル単位でするので、全体としては「110円24銭で200万ドルを売る(円を買う)」という意味になります。
取引形態は多様化しています
為替市場の動きを知る様々な値
為替は一物一価
終値、高値、安値、中心値などの値は、 中央銀行 である日本銀行(日銀)が発表しています。日本銀行のサイトの「統計」の中にある「外国為替市況(日次)」を開くと、毎日の相場を確かめることができます。ただ、どうやって調べたのか疑問を持つ人もいるでしょう。先に見たように外為市場は様々な業者が様々な方法で取引しており、全体を把握するのは難しそうです。
<2.為替市場を予想するポイント>
相場はなぜ動くのでしょうか
予想のポイント(1):経済の基礎的条件
米国や欧州など主要国・地域の 政策金利 は、低い状態が続いています。低金利によってそれぞれの通貨の価値を引き下げる「通貨安競争」につながるのではないかと懸念する声も出ています。
(2) 国際収支 ――国境を越えてモノ、サービス、資本(株や債券など)を売り買いした収支をまとめて国際収支と呼びます。すでに説明したように、例えば貿易収支(モノの輸出入)なら日本の黒字が増えるときは為替相場を円高に、黒字が減ったり赤字が増えたりするときは円安に動かす力が働きます。モノだけでなくサービスなどの取引も含めた「 経常収支 」でもお金のやり取りが発生するので原理は同じです。
(3)為替相場を決めるもの お金の供給量――各国の中央銀行(日本では日本銀行)は、物価や金融を安定させるため、世の中に出回るお金の量を調節します。これを金融政策と呼びます。例えば日本では物価が継続して下がる「 デフレ ーション(デフレ)」と呼ばれる現象が長く続いてきました。日銀は金利を下げて企業や個人がお金を借りやすいようにしてきましたが、金利はゼロ%近くまで下がってしまい、これ以上、下げる余地がなくなってしまいました。
そこで、銀行が運用のために持っている 国債 などを買い取って銀行に代金を振り込み、世の中に出回るお金の量を増やそうとしています。ところが、それでも世の中に出回るお金の量がなかなか増えません。銀行が企業などへの貸し出しを増やさず、余ったお金を日銀にどんどん預金してしまうためです。
このため、今年2月からは、銀行が日銀に預けるお金(当座預金)の一部にマイナス0.1%の金利を適用する「 為替相場を決めるもの マイナ ス金利 政策」を導入しています。銀行が日銀にお金を預けると、利子をもらえるどころか、逆に手数料を払わなければなりません。こうすれば、銀行は日銀に預けるお金は必要最小限にして、企業などへの貸し出しにお金を回すだろうという狙いです。
(4)物価――物価はモノやサービスの価格全体のことで、 為替相場を決めるもの 消費者物価指数 などで測ります。一般に物価が上がる「 インフレ ーション(インフレ)」が起きるとその国の通貨は下落し、デフレが進む局面では通貨価値は上昇します。なぜでしょう。例えば、モノの価格が高くなるということは、同じ100円で買えるモノの量が減ることを意味します。つまり裏返すと、物価が上がっているときは、お金の「モノを買う力(購買力)=お金の価値」が下がっているのです。デフレのときは「お金の価値」が上がっているので円高になりやすいと言えます。現在の円相場の水準が割高なのか割安なのかを、日米の物価水準から考える方法があり ます。例えば、世界中で売られており、貿易もしやすい商品が、日本で1000円、米国では10ドルで売られているとしましょう。1000円と10ドルで同じ商品が買えるので、1ドル=100円(1000÷10=100)が、「通貨の実力」だということになります。一つの商品だけで物価を比べるのは乱暴ですが、仮に実際の相場が1ドル=120円なら、実力と比べて円は安くなりすぎていると考えてもいいかもしれません。英国の経済雑誌「エコノミスト」は、同じような考え方で、世界中で売られているマクドナルドの「ビッグマック(ハンバーガー)」から、1ドルが円やユーロでいくらになるかを計算して発表しています。
ニュースなどで「東京外国為替市場」という言葉を見聞きされたことがあると思います。主に金融機関などが通貨の取引を行う所ですが、市場といっても専用の取引所があるわけではありません。電話やコンピュータ回線などを通じて取引されるネットワーク市場なのです。
こうした外国為替市場は、東京のほか、ニューヨーク、ロンドン、パリ、香港、シドニーなどにもあり、世界のさまざまな通貨が、おおよそ常時、いつもどこかで取引されています。
そして「為替レート」とは、こうした外国為替市場において取引された通貨の売買価格を示します。
売買価格の決定要因
為替レートを動かす要因は、このほかにも色々ある
・「貿易収支」 為替相場を決めるもの
日本企業が海外にモノを輸出して、代金として受け取った米ドルを円に換えるときには、米ドルを売り、円を買うことになります。この取引が多くなれば「円高・米ドル安」につながります。逆に、日本企業が海外からモノを輸入して、円を米ドルに換えて代金を支払う取引が多くなれば「円安・米ドル高」につながります。こうした動きを国全体で見たのが貿易収支です。
貿易収支が黒字というのは、輸入より輸出が多いことであり、つまり上記の例であれば、円を売る取引より円を買う取引が多くなるため円高要因になります。
貿易収支が黒字の国の通貨は高くなる傾向がありますが、実際には発表された貿易収支の黒字額が予想より大きいとその通貨が値上がりするというように、予測から買われる場合があります。貿易赤字の場合はその逆となります。
・「投資収支」
日本の投資家が米国の株や債券を買うためには、円を米ドルに換える必要があります。逆に米国の投資家が日本の株や債券を買うためには米ドルを円に換える必要があります。これを国全体でとらえたのが投資収支です。つまり株や債券が買われる国の通貨は上がりやすく、売られる国の通貨には下がる要因となります。日本の株や債券が買われる場合には「円高」要因、日本の株や債券が売られる場合には「円安」要因となります。
・「景気動向」
景気が良いということは、経済活動が活発であるということを意味しますので、株価の値上がりを見込んでその国の株式市場に海外の投資家の資金も入ってくるなど、通貨高要因になります。たとえば米国に関しては、原則毎月第一金曜日に発表される「雇用統計」が米国の景気動向を見る指標として大きな注目を集めます。この指標の数値が予測より高ければ米ドル高、低ければ米ドル安となる傾向があります。
・「金利」
外貨預金の魅力のひとつは相対的に金利が高いことです。日本では低金利が続いていますので、たとえば相対的に金利の高い国の通貨で預金をすれば、円預金よりも高い金利が外貨建てで受取れます(*1)。このように低金利の円を売って金利の高い国の通貨を買う取引が増えれば円安要因となります。つまり、金利の低い国の通貨は売られやすく、金利の高い国の通貨は買われやすいということになります。
(*1 為替レートの変動によっては高い金利がそのまま収益となる訳ではないことにも注意が必要です)
・「物価」
高金利=通貨高とならない場合もあります。
物価が上昇するということはモノの価値が上がり通貨の価値が下がるということです。つまり物価上昇率が高い国の通貨は価値が下がることにつながるため、売られやすくなります。物価が上がり過ぎるとその国の政府や中央銀行は金利を上げて物価上昇を抑えようとします。新興国の通貨は金利が高いことが多いのですが、それは物価上昇率が高いからという場合もあり、その場合は、たとえ金利が高くても通貨の上昇要因とはなりにくく、長期的には通貨の価値の下落につながる可能性があります。
・「金融政策の動向」
各国の中央銀行は、上記の物価や景気安定化のために金融政策を実施しています。各国は経済成長率や物価の低下・下落が見込まれる場合には、金融緩和を実施します。その結果、経済成長率、物価が上昇する傾向があります。このように金融政策の動向によって相場は大きく変動しうるため、各国の中央銀行の景気・物価の判断、金融政策の見通しは為替市場でも大きな注目材料となっています。
・「地域紛争や自然災害など」
地域紛争やテロ事件、自然災害などの有事があると経済が混乱すると考えられて、その当事国の通貨が下落することがあります。
・「市場心理」
現在、通貨の取引は貿易など実際のモノなど(財やサービス)の輸出入に伴う需給に基づいたものよりも、投資や投機など通貨の売買そのものによって利益を得ようとする取引のほうが圧倒的に多くなっています。そのため、上がったから買う、下がったから売るというように為替レートの動き自体が買いや売りにつながったり、特段の理由もなく乱高下したり、何かの情報でパニック売りが起こって大きく下落したりするといったこともあります。
予測は困難なので長期スタンスで
そして長期的なスタンスで臨む際には、ここに挙げたような各要因をニュースなどでチェックしておくことで各通貨の長期的なトレンドを把握しやすくなります。
これらの各要因を個人ですべて確実にチェックし、理解・把握するのは大変なことと思いますが、たとえば金融機関の窓口で質問するなど、専門家に聞いたりしながら、少しずつでも学んでいきましょう。
こういったことを継続すれば、世界経済の動向にも知識が深まり、為替のことはもちろん、そのほかの資産運用にもきっと役立つはずです。
CFP®、社会保険労務士。神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエント・フライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金部会委員。経済エッセイストとして活動し、人生の神髄はシンプルライフにあると信じる。
『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)『お金が貯まる人となぜか貯まらない人の習慣』(明日香出版社)『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)など著書多数。
為替相場を決めるもの
株価を動かす要因
業績と株価
人気と株価
金利と株価
外国為替と株価
たとえば、今まで1ドル=100円だったのが、1ドル=80円になる(円高)と…
1台1万ドルで車を輸出していた会社の収入は、
1台 1万ドル=100万円で売れていたのに、
1台 1万ドル= 80万円となり、20万円もうけが少なくなる。また、ドルでの価格を上げれば車が売れなくなる。→業績が悪くなるので、株価は下がる
1ドル=120円になる(円安)と…
1台 1万ドル=120万円で、20万円もうけが多くなります。→業績が良くなるので、株価は上がる。
政治と株価
国際情勢と株価
自然災害、天候と株価
まとめ 株価は会社の価値を表すとともに、会社の未来に対する通信簿です。様々な要因によって決まります。皆さんの生活も株価に影響を与えているのです。
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